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1961年、新潟県十日町市生まれ。公立中学英語教師を経て、30歳で書芸家に転身。...

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書の値段

2009年05月26日 17:48

書は他の習い事にくらべて、お金をかけずに手軽にできる趣味です。 書の用具は、安価なものであれば、2から3千円も出せば一式揃えることができます。 その一方で、用具にお金をかけようとすれば、またキリのない世界でもあります。 かつて20代の頃についた書の師匠が、自分の愛用の硯や筆を見せてくれたことがありました。 筆は1本130万、硯は1丁500万のものでした。 ビックリして、思わず師匠に向かって「この筆10本で家が建ちますね?!」 などと言ったのを覚えています。 その師匠は「もし家が火事になったら、嫁さんをほっぽらかしても硯を抱いて逃げるよ。」 なんて冗談を言ってました。 ・・・ということで、お金をかけずに親しめる芸術であるとともに、 本格的にやろうとすると、大変お金がかかるものなのです。 ちなみに、自分自身も、これまでの人生で、書にかけたお金を考えると、 ふつうの家を2軒くらい建てられるくらいの投資はしているように思います。 その主な内訳は、筆・墨・硯・紙・書の本・展覧会や個展の費用などです。 ですから、「書はお金も時間もかけずに書けるのに、高い!」と思われるのは、心外なのです。 この作品が出来るまでには、めっちゃ金、かかってまっせ?!・・・ということです。 そしてもちろん、書の価値は、元手がかかっている、というだけの話ではなく、 たとえ制作時間は一瞬であったとしても、そこに行き着くまでの長い習練の年月が 費やされている、ということです。 その昔、美術家(墨象家)の篠田桃紅さんが、ある広告用の書を頼まれ、一筆書いた ・・・その書の値段が100万。担当ディレクターが、あまりにも高価だったったので 驚いて尋ねたそうです。 「先生、ちなみに、この書を書くのに、どれくらい時間がかかりましたか?」 すると、桃紅先生は涼しい顔で「1時間・・・」 そしてその言葉に続けて、「二十年と1時間・・・」と答えた、という話です。 桃紅さんの思いはよく分る気がします。 書の価値は、その作品を書くためにかけた時間ではないのです。 その点は絵も同じわけですが、書は一瞬でできることから、どうも世の中で 絵画や彫刻といった他の芸術作品に比べて、価値を低く見られがちなような気がします。 書は瞬間に永遠を込めるアートです。 かけた時間など、宇宙の時間の尺度からしたら、1秒も10年もさほど変わらない・・・ 芸術作品の価値は、その作品を作るためにかけた時間ではないのだ、ということを、 世の中の人たちにも分かってほしいと思います。

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